<概況>
松山と愛媛県南部の中心都市宇和島とを結ぶ特急列車。 電車化されて全てが松山で折り返してしまう「しおかぜ」「いしづち」の末端区間をカバーする。 現在は全列車松山運転所の2000系気動車によって、松山〜宇和島間に16往復が設定されて、日中は1時間間隔で運転されている。 2000系はアンパンマン列車とサイクルトレインのみ量産車が使用され、それ以外は基本的にN2000系が運用に入る。 なお、アンパンマン車両で運転されるのは3往復(3/9/17/8/16/24号)となっている。ただし、このうちの3/24号は所定4両編成のうちの2両のみがアンパンマン車となる。 列車名のイメージとは裏腹に、わずか100km弱の間で犬寄峠、夜昼峠、笠置峠、法華津峠、知永峠と多くの峠越えがあり、特に伊予大洲〜八幡浜〜宇和島間は33‰勾配と200〜300Rの急曲線が連続する難所である一方、伊予市〜内子間のような高速走行に適した区間もあり、2000系がその性能を遺憾なく発揮する。 |
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<HISTORY> 臨時列車としては1988年頃から時折運転されていたが、市販の時刻表に掲載されることはほとんど無かった。 定期列車となるのは1990年11月21日改正の時で、それまでの急行「うわじま」をそのまま格上げする形で松山〜宇和島間に4往復が登場。当初よりエル特急指定であった。 4号のみキハ181系で、それ以外はキハ185系であった。 1991年3月16日改正で、「いしづち13号」の系統分割により下り1本が増発された。 結果、松山〜宇和島間に下り5本/上り4本の運転となり、4/9号がキハ181系だった以外は全てキハ185系で運転されていた。 ![]() 宇和海1号 予讃線 市坪〜北伊予間 1992年8月16日 「しおかぜ」と交換する「宇和海」 ![]() 宇和海1号(左)/しおかぜ6号(右) 予讃線 伊予立川駅 1992年9月15日 ![]() 宇和海2号 予讃線 伊予中山〜伊予立川間 1992年11月8日 ![]() 宇和海2号 予讃線 市坪〜北伊予間 重信川橋梁 1992年12月 ![]() いしづち3号(左)/宇和海2号(右) 予讃線 伊予大洲駅 1993年1月31日 伊予中山で交換する「宇和海」 ![]() 宇和海5号(左)/宇和海4号(右) 予讃線 伊予中山駅 1993年1月31日 1993年3月18日改正では、一挙に13往復に増発されると共に全列車が2000系化されて大幅にスピードアップした。 なお、このうちグリーン車を連結していたのは4往復であった。 伊予市を通過した2000形込みの「宇和海」
1994年12月3日改正では、下り1本が新たに増発された「いしづち」化されたため、松山〜宇和島間に下り12本/上り13本の運転となった。右側には同駅で交換待ち中のモノクラスの「宇和海」が見える ![]() 宇和海5号(左)/宇和海6号(右) 1993年4月 予讃線 伊予市〜向井原間 この当時はモノクラス編成は3両が所定編成であった ![]() 宇和海9号 予讃線 伊予市〜向井原間 1994年8月 グリーン車については、従来通り4往復に連結された。 1995年4月5日改正でさらに増発されて、松山〜宇和島間に下り14本/上り15本となり、日中完全毎時1本の運転となった。 なお、グリーン車連結列車については、従来通り4往復のままであった。 1996年のGWに運転された2両編成の臨時「宇和海」 なお、運転区間は松山〜八幡浜間で、同年のお盆や年末年始にも運転されたが、 1997年の夏臨を最後に以降の運転は無い ![]() 宇和海53号 予讃線 市坪〜北伊予間 1996年5月5日 1996年GWの運転では、この年の春に登場したばかりの剣山カラーの車両も充当され、 大変貴重なシーンとなった
宇和海52号 予讃線 伊予市駅 1996年5月5日 1997年3月22日改正では、昼間の1往復が「しおかぜ」に系統統合され、松山〜宇和島間に下り13本/上り14本となった。 1997年11月29日改正から「エル特急」の呼称をやめている。 また、この時からモノクラス編成の基本編成がそれまでの3両から4両(指定席2+自由席2)に増強されている ![]() 伊予石城駅で交換する2000系「宇和海」
![]() 宇和海10号(左)/宇和海5号(右) 予讃線 伊予石城駅 1998年9月14日 高光を通過して知永峠の33‰に挑む2000系 ![]() 宇和海12号 予讃線 伊予吉田〜高光間 1998年9月14日 1998年10月2日から、モノクラス4両編成の2号車が指定席から禁煙自由席車に変更となった ![]() 2003年10月1日改正からは、「うずしお」運用を離脱したTSEが戦列に加わった。 肱川橋梁を渡る
![]() 宇和海13号 予讃線 伊予大洲〜西大洲間 2004年4月4日 宇和島までの回送車両を後部に連結した、堂々7両編成の「宇和海」 2005年3月改正まで見ることが出来た
(2枚とも) 宇和海25号 予讃線 松山駅 2004年7月14日 2005年3月1日改正では、深夜の下り1本が増発されて、14往復体制となった。 この増発には、従来回送扱いで連結されていた車両を分離して単独運転とすることで実現し、この関係で従来休日は松山始発だった特急「いしづち10号」が、毎日宇和島始発に変更となっている。 また今改正から、上り列車は全てが伊予市に停車するようになった。 鉄建公団建設の高規格区間を疾走する、
2200形量産車を組み込んだTSE編成 ![]() 宇和海9号 予讃線 伊予中山〜伊予立川間 2005年5月7日 金色の麦畑を行くTSE ![]() 宇和海9号 予讃線 伊予市〜向井原間 2005年5月14日 犬寄峠からの下り勾配を駆け下りる2000系 ![]() 宇和海12号 予讃線 向井原〜伊予大平間 2005年5月14日 TSE編成は中間に2150形を組み込む場合もあった ![]() 宇和海14号 予讃線 市坪〜北伊予間 2006年2月18日 2006年3月18日改正では、TSEを使用する4往復の通常期の基本編成が、1両減車されて3両編成となった。 重信川橋梁を渡る
![]() 宇和海11号 予讃線 市坪〜北伊予間 2006年5月14日 車体をフルバンクさせて上宇和のカーブを120km/hで突っ切る ![]() 宇和海11号 予讃線 伊予石城〜上宇和間 2006年5月28日 「しおかぜ」間合い運用による「アンパンマン宇和海」 ![]() 宇和海7号 予讃線 向井原〜伊予大平間 2008年5月8日 ![]() 宇和海7号 予讃線 松山駅 2008年10月25日 2009年3月14日改正からは、アンパンマン車両が充当される列車(下り4本/上り3本)に、喫煙ルームが設置された。 2011年3月12日改正では、「いしづち」「しおかぜ」の運転系統分割による松山〜宇和島間の部分を吸収する形で、下り2本が増発された。 上り列車については、「しおかぜ」系統分割による増分が1本と、「いしづち」への統合による減分が1本で、従来と変わらず14本となっている。 このほか、下り最終が廃止されて、代わりに上り始発1番列車が増発されている。 結果、運転本数は下り16本/上り14本となった。 細かい点では、アンパンマンのモノクラス編成で運転される下り29号(改正前の下り25号)が、アンパンマン「しおかぜ」基本編成の減車(4→3両)に伴って、3両から4両に増結されている。 2012年3月17日改正では、アンパンマン編成で運転される29号と31号で編成の入れ替えが行われ、29号がグリーン車ありの3両編成、31号がモノクラスの4両編成となった。 2014年3月15日改正では、「いしづち」の系統分割により上り1本が増え、下り16本/上り15本の運転となった(内、下り5本/上り4本がアンパンマン車両)。 合わせてアンパンマン列車1往復のダイヤ立て替えが行われ、17〜20号から23〜26号に変更となった。 2016年3月26日改正では、「しおかぜ」が全列車電車化されたことにより、従来の宇和島行「しおかぜ」1往復が系統分割により「宇和海」に統合された。 これにより松山〜宇和島間の特急は全て「宇和海」となり、下り17本/上り16本の運転となって、同じ四国の「うずしお」と並んで日本一運転本数の多い気動車特急となった。 併せて一部運用が変更されて全列車がグリーン車無しのモノクラス編成となったほか、「しおかぜ/いしづち」との指定席客の乗り換えの便を図るため、従来は下り方先頭の1号車だった座席指定席車が、上り方先頭車に変更となった。 また朝の上り通勤列車となる4号が6両編成となり、「宇和海」の所定編成としては最長(営業に供している車両のみカウント)となった。 試作車TSEも運用変更となり、1/6/17/22号の4本限定運用で残存している。 また、この改正から専用の指定席券を購入することで自転車を運ぶことが出来るサービスが開始された。→ (公式プレス) このサービスのため松山運転所配置の2100形(上り向き先頭車)については、旧多目的室(元の喫煙室)がサイクルルームに再改造され、サイクルルームの設置された車両は、出入口ドア横のLED下に自転車マークのシールが貼られている(↓画像は2116形)。 ![]() 2017年3月4日改正では基本ダイヤ等に全く変更はないが、下り列車2本が所定2両編成に減車となった。 2018年3月17日改正では運転区間や本数に変化はないが、さらに上下合わせて4本について通常期の編成が3両から2両に減車された。 また、2000系の試作車TSEが同改正をもってついに定期運用を離脱した。 代わりに、高松からN2000系3両が松山に転属し、量産車と共通で運用を開始した。 なお、サイクルトレインは現在も通年実施中である。 (→ 公式プレス:新規ウィンドウで開きます) 2019年3月16日改正では、特に変更は無い。 2020年3月14日改正では、特に変更は無い。 2020年7月18日より、2700系量産車増備に伴って「うずしお」運用から撤退したN2000系の転用により、基本的にアンパンマンとサイクルトレイン以外は全てN2000系による運用となった。 なお、同月に発生した内子線・五十崎〜喜多山間の斜面崩壊の影響により、実際の置き換え後の運転開始は7月20日からとなった。 2021年3月13日改正では、下り最終の33号が廃止されて16往復の運転本数となり、気動車特急としての運転本数では「うずしお」に次いで2位となった。 これに伴い、下り最終31号が翌朝4号の通勤輸送用の車両の送り込みのため、所定5両編成となった。 それ以外は、一部アンパンマン車両の運用が変わっているのみで基本ダイヤ及び運転系統には変更はない。 2022年3月12日改正では、特に変更はない。 2023年3月18日改正では、ダイヤ面は特に変更はないが、一部列車の編成減車(3→2両)が行われ、朝の通勤時間帯の4号も1両減車の4両編成となった。 前照灯がLED化された2151形
![]() 宇和海20号→21号 予讃線 松山駅 2022年3月17日 「宇和海」でも時折見られる「混パンマン」 ![]() 宇和海11号(→16号) 予讃線 宇和島駅 2022年10月6日 綺麗なN2000系の3連 ![]() 宇和海20号 予讃線 宇和島駅 2022年10月6日 N2424を連結した3連 ![]() 宇和海15号 → 宇和海20号 予讃線 宇和島駅 2023年5月13日 2024年3月16日改正では、特に変更はない。 松山駅高架開業に伴う2024年9月29日改正では、松山駅での「しおかぜ+いしづち」との縦列停車が解消され、特に上り列車の松山到着時の信号待ちが無くなったことから、上り列車が全般に数分程度の時間短縮となった。 その他のダイヤおよび運用車両には変更はなく、松山〜宇和島間にN2000系を中心に16往復が運転されている。 2025年3月15日改正では、松山〜宇和島間に松山運転所所属の2000系気動車使用で16往復という体制は変わりないものの、末端区間である八幡浜〜宇和島間で車掌の乗務しない都市型ワンマン運転(いわゆる信用乗車方式)が開始された。 そのための運転余裕時分を見込んだ影響により、途中の上下列車の交換駅も大きく変更となり、たとえば従来基本的に内子で交換を行っていたのが伊予立川での交換に変更となり、当然ながら新たに運転停車が発生することとなって、全般に所要時間が伸びている。 またアンパンマン列車の運用が変わり、従来の4往復から3往復(3/9/17/8/16/24号)に変更となった。 |
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<私見>
松山〜宇和島間に日中は1時間間隔で16往復が運転され、運転時刻もほぼ統一されているので利便性はよく、現状でも特に大きな不満点はないが、停車駅がやや多すぎるきらいがあるのが気になるところである。 松山自動車道の延伸に伴ってバスや自家用車の利用が増え、途中区間の利用を増やすべく停車駅が近年増えつつあるのは「うずしお」と全く同じ傾向であるが、現状のスピードでは中・長距離客まで離れていってしまいかねない。 個人的には、全列車停車は内子・伊予大洲・八幡浜・卯之町のみとし、伊予中山・伊予吉田は通勤時間帯以外全列車通過、伊予市もデータイムは2〜3時間に1本程度の停車とし、基本的に全列車松山〜宇和島間1時間10分台で運転するべきである(現在は1時間10分台となるのはわずか1のみ)。 さらに、内子以南の区間ではY字分岐もかなり残っており、本当ならこれら全てを一線スルー化して、全列車平均で1時間10分程度の到達を目指したい。 N2000系の限定運用にして最高速度を130km/hに引き上げれば、特に松山〜内子間でさらに数分の短縮が可能であろうが、N2000系の絶対数が足りないため、致し方ない面はあろう。 |