2700系 制御付振子式特急形気動車

2000系のDNAを受け継ぐ振子式気動車
<2020年ローレル賞受賞>


南  風15号
土讃線 琴平〜塩入間
2019年12月5日


詳細画像

2700系座席番号表


 JR四国では世界初の振子式気動車である2000系の後継車両として、8600系と同じ空気バネ車体傾斜式の2600系を2017年に4両試作したが、各種試運転等の結果2600系では土讃線での運用には問題があることが判明したため、2000系と同じ制御付き自然振子方式を採用した車両を新たに開発することとし、2018年末に導入されたのが2700系である。

 車体や駆動系、客室などの基本部分は2600系を踏襲しつつ、帯の色やロゴなどを一部変更し、振子作用のために屋根高さを低く抑えて車体裾部を大きく絞り込んだ構造としている。
 新開発のS−DT70形振子台車は、N2000系のS−DT61形を基本として、振子装置をベアリングガイド式に、また基礎ブレーキ装置を踏面ブレーキにするなどの変更が加えられている。

 これらの技術が認められ、2020年の鉄道友の会・ローレル賞を受賞した。


 2018年12月26日に、先行試作の4両(2700形、2750形各2両)が四国に到着。
 年明けから試運転等を行い、2019年12月を目処に営業運転を開始する旨が公式にアナウンスされ、2019年1月23日に報道陣に公開された。

 2019年度に入ってからさらに、7月に半室グリーン車の2800形が登場して同月4日に四国へ新製回着するなど増備車が落成。


〜定期営業運転開始〜

 2019年7月末までに2800形2両、2700形と2750形各7両の16両が出揃い、翌8月6日から特急「うずしお」として営業運転を開始した。

 さらに同年9月3日から「しまんと」「あしずり」に、そして同9月28日から「南風」「しまんと」「あしずり」「うずしお」として本格的な定期運用を開始した。
 参考:公式発表(「新型特急気動車「2700 系」の営業運転について(2019年7月29日公表)」


 2020年度に入って、4月に増備が行われて(2800形3両/2750形6両/2700形7両)7月18日から土讃線と高徳線での定期運用を拡大、土讃線の2000系アンパンマン車両を置き換えた。
 これで高徳線の「うずしお」は従来のN2000系の運用が全て2700系に置き換わり、2000系は高徳線の定期運用から離脱している。

 同年8月初旬にはさらに増備車が導入され(2800形2両/2750形3両/2700形2両)て、お盆の増結に充当された。

 なお、土佐くろしお鉄道では2016年の取締役会で新型特急用気動車2両の導入を承認しており、それに基づいて2020年に8月に2両が導入された。
 車番は、2000系を踏襲してJR四国車の車番+30(ただし”0”起算)され、2730形と2780形を名乗って通常は高知運転所に配置され、主に「しまんと」「あしずり」に運用されている。


 これを受けて2021年3月13日改正ではさらに運用が拡大され、土讃線の「南風」「しまんと」が全て2700系化された。


 2024年現在、JR四国車39両(2700形・2750形各16両、2800形7両)と土佐くろしお鉄道車2両の合わせて41両が活躍中。

 なお、多客時の増結運転に際しては車両数が不足するため、「しまんと」「あしずり」を2000系が代走する措置が2022年から執られている。



多度津工場
2019年1月28日

多度津工場
2019年2月28日

予讃線 高松駅
2019年6月24日

 社員研修のためか、JR四国本社前で停泊中の2753+2703。

高松運転所
2019年7月11日

 2019年7月までには2750+2750の第7編成と、半室グリーン車の2800形が既に出揃っていた。

うずしお20号
高徳線 神前〜讃岐津田間
2019年8月8日

 夏休みシーズン中に「うずしお」に投入された当初は2600系の代走的運用であった。

土讃線 琴平〜塩入間
2019年9月1日

 土讃線での営業運転開始を前に、高知〜多度津間で運転されたツアー列車。
 往路は7連であったが、復路は4連に短縮された(往路のみで解散のプランがあったためと思われる)。

南風15号(左)/南風18号(右)
土讃線 金蔵寺駅
2019年10月4日

 先輩に当たる2000系アンパンマン車両との交換。

予讃線 本山〜観音寺間(財田川橋梁)
2019年11月22日

予讃線 観音寺〜豊浜間
2019年11月22日


 伊予西条の鉄道歴史パークのイベントでの特別展示のため、伊予西条へ向けて回送される、2751+2707。

 これ以外での予讃線・多度津以西区間への2700系の入線は、路線データ取得のための試運転と、2021年10月の特急「モーニングEXP高松」の代走で伊予西条まで走行したことがある。


土讃線 三縄〜祖谷口間
2020年5月7日

土讃線 阿波池田駅
2020年5月7日


 2020年5月7日に、試運転列車のダイヤで6両が高知運転所に新製回送された。
 この日回送されたのは、2805+2761+2711+2762+2712+2710であった。

南風18号(左)/南風15号(右)
土讃線 金蔵寺駅
2020年7月30日

 2020年7月18日から2000系に代わって営業運転を開始した2700系アンパンマン車両。
2758形


予讃線 鴨川〜八十場間:上
予讃線 高松駅:下
2020年9月24日
2753形


土讃線 塩入駅
2021年9月21日


土讃線 讃岐財田駅
2021年10月1日


 2700系についても、四国名物(?)の点検入出場に伴う単行尻切れトンボ(および、他形式に牽引されての基地入出場)が日常的に見られるようになってきた。

 ちなみに妻部の後部反射板は、貫通ブレーキを使用する列車でかつ、昼間の明るい時間帯で、途中にトンネルが存在しない区間を運行する場合は、省略することが可能になっている。
 従って四国の場合は、正午過ぎに運転される多度津→高松間の列車は掲出無し、それ以外は掲出される。




(以下、個人的雑感)

 気になる乗り心地であるが、2000系に比べてかなり良くなっているのを感じ取ることが出来る。

 特に振子制御がかなり進歩している模様で、連続S字カーブですら車体の傾斜をほとんど意識させることがないほどのスムーズでかつ自然な制御が行われている。
 また、2000系では直線区間でも車体が傾いたままの車両が時折見受けられるが、2700系については現在の所そのような場面は目にしておらず、かなり改善が進んでいる模様である。

 個人的には、少なくとも性能面に関しては2000系の正当な後継車両として相応しい進歩を遂げていると感じられた。



形式2800形2750形2700形
側面 海側
(予讃線基準)
山側
(予讃線基準)
屋根上


仕様等  下り向き先頭車。
 振子指令装置を搭載する半室グリーン車。
 下り向き先頭車。
 振子指令装置を搭載する。
 上り向き先頭車。
 車椅子対応設備を備える。
記号SCC’
製造数2018年度第1次車(4)-22
2019年度第2次車(12)255
2020年度 第3次車(16)
(4月落成)
367
第4次車(9)
(8月落成)
23 +1 (TKT車)2 +1 (TKT車)
製造者川崎重工
車体寸法20,800 mm (全長 21,300mm)
2,786.3 mm
3,445 mm (屋根高さ)
3,855 mm (全高)
重量47.4 t46.9 t46.8 t
車体 ステンレス鋼板
先頭部:普通鋼板
機関形式
出力
SA6D140HE−2 × 2
331kW (450PS) /2,100rpm × 2
変速機形式 DW24
変速2段/直結4段 電子制御自動変速式
最終減速比2.353(?)
ブレーキ方式 機関・排気ブレーキ併用 電気指令式空気ブレーキ
耐雪ブレーキ付き
ブレーキ装置踏面方押
フラット防止装置付
台車形式・方式等 S−DT70
(前位・公式側)
(後位・公式側)
(後位・非公式側)
(前位・非公式側)

なお、前位側の台車は第3次車以降一部設計変更が行われている。
(前位・公式側)
第3次車〜

車軸取付の何らかの装置(センサー?)の向きが逆になり、それまで台車枠に沿って這っていたケーブルが前に来ている。
ボルスタレス式
制御付き自然振子式
(振子装置:ベアリングガイド式)
最大傾斜角:5度
軸箱支持方式:コイルスプリング支持円筒案内式
車輪直径:810 mm/軸距:2,100 mm
台車中心間距離14,400 mm
連結器 自動解結付密着連結器
電気連結器併用
許容最高速度130km/h
曲線通過速度 400>R:本則+20km/h
600>R≧400:本則+25km/h
R≧600:本則+30km/h
補助電源装置S−IV65A
出入口ドア数片引戸 × 2扉
700 mm × 2 700 mm × 1 (前位側)
940 mm × 1 (後位側)
冷房装置 AU722S × 2
20,000 kcal/h × 2
シートピッチ普通:980 mm
床面高さ1,105 mm
乗車定員 グリーン室:12
普通室:24
5246
その他
設備装置
客室半室グリーン+半室普通普通車
WC洋式 × 1洋式 × 1車椅子対応洋式 × 1
洗面所
CPC600−S
備考 傾斜制御用位置検知車上子搭載
多目的室有り
傾斜制御用位置検知車上子搭載車椅子対応設備




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