まだまだ新しい2700系であるが、早くもいくつかの小さな変更が見られる。
<冷却系統改良>
2000系の後継車両として満を持して登場した2700系気動車であるが、登場当初はオーバーヒートが頻発した。
特に、土讃線特急「南風」の大半と高徳線特急「うずしお」のほぼ全列車を置き換えた2020年度には243件と多発し、殊に7月15日から8月31日までの間で232件と夏期に集中し、そのほぼ全てが土讃線・多度津〜高知間で発生していた。
参考:日本鉄道車両機械技術協会刊行「R&m」誌より
オーバーヒートによる列車遅延等も発生したため、問題解決を図るべくJR四国では対策を検討することにした。
2700系の床下機器図面
を見ると、ラジエーターは第1−4位側面床下の線路方向に2台が直列に配置されており、外から吸入して内側へ排気排熱する構造になっている。
2021年3月17日に、2703形を使用して高知運転所内で定置試験を行った結果、ラジエーターファンの稼働に伴ってラジエーターと車体の間の隙間から排気が前面に回り込み、吸入空気の温度上昇に影響していることが判明した。
そこでラジエーターの側面と、上部の車体との隙間部分に排風の回り込みを防止するカバーを設置(延長)した。
さらに、冷却回路に組み込まれていたサーモスタットと水温継電器についても、設定温度と実際の動作温度に差異が認められたことから、その誤差を考慮した温度設定に変更した。
これらの対策の結果、2021年度にはオーバーヒートの発生件数が8割以上も減少し、対策の進んだ2022年度にはさらに改善された。
|
参考:日本鉄道車両機械技術協会刊行「R&m」誌より
|
2022年度中には全車について対策工事施工完了した模様である。
手持ちの画像で落成当初と現在とでラジエーター回りを確認すると、確かに左右と上部にカバーが追加(延長)されているのがよく判る。
落成当初の2711形のラジエーター回り
|
対策済みの2753形のラジエーター回り
|
(個人的私感)
2020年度のオーバーヒートのデータを見て、この時点では「南風」は14往復中の9往復、「うずしお」は16.5往復中の11.5往復が2700系で運転されていたが、高徳線でのトラブルはほとんど無く、ほぼ全てが土讃線・多度津〜高知間で発生していると言って良い状況である。このことから、再加速等で力行する機会が非常に多いにもかかわらず列車速度がさほど上がらない(最高速度で走れる区間がほとんど無い)うえにトンネルが非常に多いことも、ラジエーターの排熱対流に悪影響を及ぼした可能性があるのではないだろうか。
もしそうであれば、改めて土讃線の線路条件の厳しさを思い知らされる感じである。
<排気管変更>
2700系は1500形等と同じクリーンディーゼルエンジンを搭載しているが、1500形に比べると屋根上をはじめとした車体の煤汚れが激しい。
特に妻面(連結面)付近の汚れが凄まじく、営業運転開始から1ヶ月後の車両でもこのような状況
であった。
現在は、検査出場直後でもない限りは屋根上も妻面も真っ黒の車両ばかりであるが、これを少しでも改善するためか、排気管の吐き出し方向を変更する改造が2021年度から始まっている。
当方手持ち画像で最初に確認できるのは、2021年11月18日の2702形黄色アンパンマン車(高知運転所配置)で、この時は後位側のマフラーのみ、先端の曲がっている部分をカットしていた。
同車は8月19日撮影時点では通常のマフラーなので、その間に改造されたことになる。
その後2022年3月までの間に、前位側マフラーについても先端の曲がった部分がカットされ、同様の改造が他の3両の黄色アンパンマン車両(全て高知運転所配置)にも波及しているのが確認され、とりあえず2021年度の改造はこの4両のみにとどまっている模様。
2022年度後半になって一般車にも波及が始まったが、後位側の改造内容が変わっており、先端部分をより根本に近いところからカットして、まさしく竹槍のように高く突き出すように延長継ぎ足し改造をしている様子が見て取れる。
恐らく黄色アンパンマン車両の状況を検証した上での変更であると思われる。
2022年度は、11月中(?):2711形、11月30日:2762形、12月1日:2805形、12月9日:2806形、12月26日:2709形 と、年末までに5両の施工が確認されている(日付がはっきりしている物は、いずれも検査出場の際に確認できたもの)。
2022年末時点では、合わせて9両の改造施工が確認されているが、すべて高知運転所在籍車両ばかりであり、恐らくはトンネル区間が多いことから効果が期待できるためであろうと推察される。
2022年度末(2023年年明け)からは、高松運転所在籍車にも波及が始まり、2023年7月末時点で既に半数近い車両が改造済みとなっている。
2024年6月末時点では、高知運転所在籍車25両のうち23両(くろてつ車を含む)、高松運転所在籍車は16両中8両が改造済みとなっている。